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ステンカラーコート。


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バーバリーの、何の変哲もないステンカラーのコート。今から20年以上も前、2年間アルバイトをしたお金をもってヨーロッパへ40日間の一人旅にでた。日本からまず到着した地がロンドンで、私はボンドストリートへ向かって本店でこのコートを買った。


どうしてバーバリーのコートが欲しかったのかまったく記憶がない。バーバリーに思い入れはなかったし、特に好きなブランドではなかった。でもそのとき私は、確かに目的のある人の足取りで本店へ向かい、オフホワイトかモスグリーンか迷って、こちらを選らんだのだ。


店員はジェントルマンで、痩せ細った東洋の若者を慇懃に迎えてくれたけれど、私がほしいサイズは売ってくれようとはしなかった。店員がすすめるのはジャストサイズのコート。ブリティッシュの本場だから当然といえば当然だ。しかしその当時の日本ではオーバーサイズが主流だったのだ。だぶだぶのスーツ。だぶだぶのコート。だから私はワンサイズ大きめのコートを求めたが、店員は「NO」といってジャストサイズを薦めるばかりだ。金さえ出せば何でも言う通りになると思ったら大きな間違いだということは良くわかったけれど、そう言われれば是が非でも買いたくなる。若気の至りだった。かなりの時間、交渉した。そして何とか希望のサイズを手に入れた。


しかし二十歳そこそこの若造に、プレーンなステンカラーコートは似合うわけがない。ときには癇癪を起こして、洗濯機で丸洗いするとか、小さな袋に詰め込んでわざとくしゃくしゃにするなんて無茶なこともしたけれど、このコートはなついてくれず、そっぽをむくばかりだった。


大学を出て、社会人になって、毎年コートの季節になると、一度は試してみる。しかしどうもしっくりこない。着ていてぎこちない。つまり着こなせていないのだ。毎年、試みるが、今年もダメ。今年もダメ。そんなことを繰り返して20年。本当に媚びないコートなのだ。


ところが今年は、すっとなじんでくれた。違和感がない。20年たってやっと着こなすことができたのだ。なんだかうれしくて、うれしくて。20年間、手放さずに良かった。今年はこのコートばかり着ている。

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