軽井沢は、霧の中。
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心斎橋のど真ん中に1軒の家があって、「たわらや旅館」という屋号をかかげている。今はもう泊まり客はうけいれていなくって、顔見知りの客に限り料理とお酒を振る舞ってくれる。ここのおかあさんはお太㐂さんといって、今年でなんと91歳。しかしとてもお元気で、お盆にビールの大瓶2本、日本酒の大徳利をのせて2階へあがってくる。記憶も滑舌も耳もしっかりしていて場を盛り上げてくださる。
毎年1年に1度か2度、お太㐂さんの元気な顔を見にいくようにしている。今回は松尾貴史さんと桂吉坊さんとうかがった。お料理はすき焼きをチョイス。関西風のすき焼きです。
お太㐂さんの話しをききながらすき焼きを食べて、食事が終われば、粋な都々逸や長唄を聴いて、ああ、いいもんです。今回は吉坊さんも長唄を披露してくれたし、松尾さんもテーンツテンテンと。笑って、唸って、感心して、堪能して。お太㐂さんを囲んだ夜は瞬く間に過ぎていった。
お太㐂さん、いつまでもお元気でね。
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次の企画が動き出したので、久しぶりに金沢へ。打ち合わせ終了後、金沢の名居酒屋「いたる本店」へ行く。大将は、あいかわらずの、とびきりの笑顔で迎えてくださる。そしてそこへ、私が金沢入りするというので「能登の花ヨメ」でお世話になった方々が集まってくださった。県庁の方、放送局の方、新聞社の方、そして今や地元の名プロデューサーになった方。みなさんエライ方ばかりなのに、忙しい時間を調整して集まってくださったのだ。久しぶりと握手をかわすと、すぐさま空白の時間は消え、うち解けた雰囲気になる。その一瞬に、タイヘンだったけれど、大きな仕事をした人とのつながりの確かさを感じる。
「いたる」の絶品の料理を食べ、おいしい酒を飲み、爆笑の数と声の大きさが増えるにしたがい、話題はこれまでのことより、これからのことへ向かう。何かが生まれそうな予感。いや、正確には何かを生み出そうと、いっしょにまた何かをやろうという熱がみなぎってくる。もうあんなやつとの仕事は二度とごめんだ、といわれることほど悲しいことはない。自分から切ったと思っているつもりでも、実はまわりから見切られていたことほど滑稽なこともない。人と人とのつながりが次のステップの土台となる。勝手気ままでは次はない。人との関係性の中でしか物事は動かない。これは映画の仕事だけでなく、広告の仕事やその他のすべての世界でいえることだろう。そんなことを改めて思った夜。素晴らしい金沢の先輩に乾杯です。
みなさんと別れてから、ホテルの近くの「更科藤井」へ。冷たい納豆蕎麦。これは本当に旨い。これを食べずして金沢の夜は終わらない。
翌日、新しくなった近江市場へ。建物は新しくなっているけれど、市場内の活気はあいかわらずで、うれしくなってあっちへうろうろ、こっちへうろうろ。私はこの市場がやっぱり大好きです。
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月刊誌の取材で城崎へ。今回は「文人が愛した湯」というテーマだったので、取材前に志賀直哉の『城崎にて』を読む。実は私、島崎藤村と志賀直哉はあまり真剣に読まなかった。なぜだか手が伸びなかった。食わず嫌いでありますな。しかし今回、ゆっくりと『城崎にて』を読んで、対象をきっちり見据えて言葉を選んでいることに驚く。歳を重ねるとそれまでわからなかったものが見えたり、感じたりできることがあるから、昔の小説を読み返すのは、普通の倍以上の発見があって面白い。その他の短編も、ポケットのなかにある限りある飴を惜しみ惜しみ食べる子供ように読み尽くす。
ということで初めての城崎へ。
晴→豪雨→晴→豪雨、2日間ともそんな不順な天候の中で、晴れの間に手早く撮影をするませることができたのも、この仕事も1年を超えて、カメラマンとの意思の疎通がうまくなったからか。 取材終了後、せっかくだから外湯をめぐる。さすがに7つは無理。3つでギブアップ。
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映画の仕事で能登へ訪れるたび、ずっと気になっていたのが輪島塗の器。「深三」に泊まるたびに、テーブルにならぶ器を手にとっていいもんだなぁと憧れていた。正直、何度も欲しいと思ったけれど、なかなか踏み切れなかったのは、値段もさることながら、どの店で買えばいいのかとか、誰の器を買ったらいいのか、器そのものよりも周辺の情報を気にしていたからだった。つまり真底、その器が欲しかったわけではなかったのだ。
しかし今回、輪島へ行って、朝市の帰り、ふらりと立ち寄ったお店でこの器を手にとったとき、無性に欲しくなったのだ。ひとことでいえば手にすっとフィットしたのだった。こんなことはいままでに一度もなかった。これもひとつの出会いに違いない。もちろん買い求めた。はじめての漆器。「長井均さんの作品です」と店の方は教えてくださった。
輪島の漆器は、日々使いにしてこそ価値がでると聞いた。これを機に皿や椀や匙などをひとつひとつ買いそろえていこうと思った。
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