善意の酒場。
4月9日の収支。
お客様42名。
諸経費39,447円。
売り上で85,000円。
義援金は45,553円。
善意の酒場だなってつくづく思う。
誰かが華やかに見えるときその人はかげの力に支えられている。かげになった人の気持ちを思い、昔の人は、「さま」をつけて心の中で頭を下げた。だから、おかげさまは、ありがとうと同じ意味に使われる。必要なものは、地味に見える。これは「必要なものは、地味に見える」という秋山晶氏の名コピー。
本当におかげさまの酒場だと思う。新聞に載ったり、ラジオで紹介してもらったりするとき、まず名前があがるのは私だけれど、バー エイル・デスポワールのまわりにその時間をすばらしいものにしようというたくさんのかげのチカラ、善意の想いが集まっている。
まずは空間を貸してくれたバー立山の立山重美とカヨちゃん。金曜日の夜に事前の準備をしてくれて、終了後はあとかづけと掃除までしてくれている。それでいてけっしてでしゃばらず、恩にきせることもない。準備と片付けをすることが私たちにできる復興支援だといってくれる。カウンターといえばバーテンダーの聖地。誰かがブログで書いていたけれど、始めた人もすばらしいが、貸した人もすばらしく、二人の信頼関係がこの酒場を実現させたって。本当にその通りだと思う。立山重美とカヨちゃんなしでは実現できず、持続もできなかった企画、本当にありがとうございます。
そして毎回手伝いにきてくださるグラン・シェフや辻調の先生方や家元。もういまや先生方の料理やスイーツなしでは開店できない店になってきているし、家元のトークなしには後半の展開は考えられない店になっている。ハイボールとつまみだけでなんとかしようという、当初とは違う方向に進んでいるけれど、これはうれしい誤算で、先生方や家元とのふれあいを楽しみにこられるお客様が確実に増えている。本当にありがとうございます。
さらにお客様。客商売も酒づくりも素人なのに気持ちで飲んで、楽しんで、その善意が場の空気を温めていく。その日、初めてとなりあった者同士が酒を飲みながら笑い話に花を咲かせる。店は客がつくるという言葉があるけれど、バー エイル・デスポワールも確実にお客様が場を作ってくれている。ありがたいことです。
東日本の大災害に対して何かしたいという思いで始めた酒場。でも、本当はそんなきれいごとではなく、正直にいえば自分の不安を解消したいという理由の方が大きかった。東日本や関東の人とはくらべものにはならないけれど、私の仕事にも影響があって、とまったり、ペンディングになったりしたものがある。小さな事務所だから資金的に余裕があるわけでなく、仕事がとまれば即売り上げに響いてくる。それでも毎月の払いは確実に必要だ。このまま仕事が動かなければどうなるのか、そのことを思うと歩いていてもしゃがみこみたくなったりした。テレビではどのチャンネルも悲惨な映像を重ね塗りし、絶望的な情報をたれ流している。その中で、明るく、前向きで、楽しく幸せなコピーを書くことに矛盾と懐疑を覚え、精神的にも疲れがたまっていく。積もっていく不安と疲労。バランスがどんどん崩れていきそうなのに、東日本や関東の人を思うとそんな甘えは許されないと無理矢理の元気と笑顔を絞り出す。
そんな中で浮かんだ企画がこの援会酒場。実現して思ったのは、私がみなさんから一番元気をもらっているということだった。ひとりじゃない。つながっている。酒が、料理が人と人の思いを紡いでいく。ここに希望はあるという手応え。ささくれた神経をやさしくほぐす沢山の善意。それは思ってもみなかった効用だった。やって良かったと思う。希望は人だけに与えられた明日への翼。この場の善意の想いはきっと東日本に伝わると信じている。バー エイル・デスポワールは今週末も18時から開店します。
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